2023年10月8日
電子帳簿保存法・電子取引への具体的な対応方法を整理しました
先日の記事で電子取引について触れましたが、ここではその対策についてもう少し深掘りしてみます。
既に市販のソフトを導入済みという方は対策済みかと思いますので問題ないですが、対応したいけれどもお金を出してまでソフトを導入するというのに躊躇されている方も多いでしょう。又、そもそも金銭的な事情や人員的な事情でそこまで対応するのは難しいという方もいらっしゃるはずです。その場合に出来るだけお金も労力もかけずに行える方法をお伝えいたします。
なお、2年前(2期前)の売上高が5千万円以下の事業者については下記②の検索機能(可視性の要件)は不要ですのでそのイメージでご確認ください。
【電子取引データの保存時に行わなければならないこと】
簡潔に言うと下記二点の対応が必要です。
①真実性の要件
→受け取ったデータの改ざんが出来ないようにする(訂正等をする場合はその履歴が分かるようにする)。
②可視性の要件
→日付・金額・取引先などで検索できるように保存しておく。
この記事では、「可能であればこちらで対応を」という方法と、「そもそも対応が難しい」という2パターンをお伝えいたします。
【可能であればこちらで対応を】
①真実性の要件への対処方法
市販のソフトを導入しなくても、訂正削除等の防止に関する事務処理規定を整えておけばOKです。規定のひな形は国税庁のHPからダウンロードできますので、それぞれの実態に応じて整えておくことでクリアできます(もちろん、作成した規定に則って運用する必要がありますのでご注意ください)。
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/0021006-031.htm
②可視性の要件への対処方法
・PDFで保存するときに規則的なファイル名で保存しておく。2024年1月20日に10,000円の商品をA商店で購入したのであれば「20240120 10000 A商店」のイメージです。
若しくは
・エクセル等で検索簿を作成しておく。このエクセルのひな形も上記国税庁のリンク先からダウンロードができます。
【そもそも対応が難しいという方】
システム対応は間に合わなかったが税務調査時にデータをダウンロードして提示できるという場合、猶予措置としてそれだけでOKとなります。
ただし、すべての事業者が無条件で認められるということではなく、「対応できていないことに相当の理由があると所轄税務署長が認めた場合」に猶予措置が適用されるということですのでその点は注意してください。具体的には下記イメージとなります。
■認められるケース
・金銭的な問題や人手不足等の理由により体制を整えることができない。
■認められないケース
・社内ワークフローの整備は整っているが経営者の信条によって実施していない。
この扱いについては国税庁から「事業者の実情に応じて柔軟に認める」と発表されていますが、本当にケースバイケースかと思われます。ただ、労働時間が長くなったり、仕事に付加価値をつけて事業の収益性をあげるための時間を割いてまでこの対応を迫られるのは正直きついですけどね。
最後に、この電子取引データの保存がされていなかった場合は青色申告の取消対象になるとされています。ただし、合わせて下記の取り扱いであることも発表されています。
・違反があったことをもって直ちに取消を行うものではない。
・取消の判断は事務運営指針に基づいて総合的に判断。
事務運営指針→https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/shotoku/shinkoku/000703-3/01.htm
個人的な考えですが、この電子取引データの保存はデータ改ざんなどを防止して事実と異なる処理を防ぐものであり、データ保存ができていなかったとしてもその改ざんなどを行っていない場合は脱税や調査妨害などと性質が全く異なるものですので、「データ保存されていない=即青色申告の取消」とはならないのかと想像しています(即青色申告の取消になるのであれば、整備の不備も含めて大半の事業者が取消の扱いを受けてしまいそうな気がします)。
とは言え、猶予措置があるから大丈夫とは言い切れませんので可能な限り対応していきましょう。
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佐藤友一