2023年9月9日

インボイス・振込料の取り扱い【売り手の立場として入金時に差し引かれるケース】

インボイスの実務的な対応について、前回の続きとして「振込手数料の考え方と対処方法」についてお伝えいたします。

前回は入金時の振込手数料だけ触れましたが、自社が行う振込という作業を含めた場合は下記ケースに分けて整理する必要があります。

(1):(売り手の立場として)売掛金の入金時に差し引かれるケース。

(2):(買い手の立場として)銀行窓口で支払うケース。

(3):(買い手の立場として)ATMで振り込むケース。

(4):(買い手の立場として)ネットバンキングで支払うケース。

 

しかし、本当に嫌になりますねこのインボイス制度。。。

今回は振込手数料そのものの考え方と(1)の論点だけ整理し、(2)~(4)につきましては後日配信をさせていただきます。

 


■インボイス制度における振込手数料の考え方

 

①自社が負担すべき手数料(経費)と考えた場合

(A):自社が直接銀行へ支払っている場合→銀行からのインボイスが必要。

(B):自社が負担すべき振込手数料について買い手が立て替えた(その分だけ自社への振込額を減らしてきた)→立て替えている買い手からのインボイスが必要。

 

上記(A)は買い手の立場として(2)~(4)にあたりますので説明は後日とし、(B)の場合は買い手からのインボイスが必要となります。ただし、そんな面倒なことを毎月行うのは現実的ではありませんので、実務上は下記②で対応していくことになります。

 

②買い手に対する請求のうち、振込手数料の分だけ値引いたと考えた場合

・自社の売上値引きなので相手方からインボイスを貰う必要がない。

・ただし、値引いたという事は、相手方に当初渡したインボイスの金額と異なった金額になってしまった(自社:値引き後の金額が売上 相手方:値引き前の金額が仕入)。

・これを調整するため、逆に相手方に対して値引き等を記載した返還インボイスを自社が交付する必要がある。

・この返還インボイスは税込1万円未満であれば交付しなくてOK。

∴振込料が1万円を超えることはないため、結果的に振込料に関してインボイスの請求も交付もしなくて良い。

 


■売掛金の入金時に差し引かれた振込手数料の会計処理(今後対応が必要です)

 

「上記②のように考えている」というだけではダメで、それを会計処理として帳簿に反映させる必要があります。この部分については免税事業者や簡易課税制度の適用事業者を除いて下記①か②のいずれかに変更していただく必要がありますのでご検討ください。

 

現行は・・・勘定科目:手数料として経費処理。消費税:経費の区分コードで処理。

今後①・・・勘定科目:手数料→売上値引き勘定に変更。消費税:売上値引きの区分コードに変更。

今後②・・・勘定科目:手数料として経費処理のまま。消費税:売上値引きの区分コードに変更。

 

インボイスは消費税の論点であるため、消費税の区分をきちんとしていれば勘定科目は何でも構いません。

ただし、通常の会計ソフトは勘定科目ごとに消費税の区分コードが紐づけられており、手数料という経費勘定の中に「売上値引きとしての消費税」と「経費としての消費税」を混在させた場合は経理担当者が処理する手間が増えてしまう(&処理間違いをひきおこす)ため、売掛金の入金時に差し引かれる振込手数料については勘定科目を売上値引きに変更して処理する方法(今後①)が良いのかと思われます(自社が支払う振込手数料の会計処理は今まで通りで大丈夫です)。

 

参考までに国税庁のリンクを貼っておきます。

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/kaisei/202304/03.htm

 

札幌で税務顧問や相続税について税理士をお探しの方はぜひお声がけください。

佐藤友一