2023年9月19日
インボイス・結局のところ税務調査でどのような事があり得るの?
本当に面倒なインボイス制度ですので、これを令和5年10月1日から全ての事業者が不備なく完璧にスタートできるとは思えません。開始した後も会社ごとに色々な疑問点が出てきたり、受け取った領収書や請求書に不備があるため取引先に連絡をするなど不毛なやり取りが数か月は続くのではないかと想像しています。
そんな中、国税庁から発表されているインボイス制度開始後の税務調査の方針についてお伝えしたいと思います。
(1)インボイスの記載事項に不備があったらどうするの?
・一般論として、税務調査は大口・悪質な不正計算が想定される納税者を重点的に実施しており、今までも保存書類について軽微な記載不備などを確認する目的の調査は行っていない。
・仮に不備を見つけた場合でも、関連のある他の書類を合わせることで適正なインボイスとなることもあり得るし、修正されたインボイスを取引先から改めて送ってもらうなどで柔軟に対応していきたい。
(2)相手方の故意によって不正なインボイスを受け取っていたら?
→例えば取引先からインボイスを受け取って適切に処理していたが、実は取引先はインボイスの番号を取得していなかった(架空の番号が記載された領収書を渡されていた)。結果、本来は税額控除が出来ないのに控除をして申告していた場合のイメージです。
・原則として税額控除はできない。
・場合によっては消費税法30条7項(災害その他やむを得ない事情により保存できなかった場合の宥恕規定)の適用も考えられるが、個々の事実関係に基づいて適切に取り扱っていく。
ここからは私(佐藤)の私見です。
上記(2)についてですが、この事例はおそらく修正申告せざるを得ないかと思われます。修正申告によって不要な延滞税などが生じてしまいますが、そこは虚偽のインボイスを渡してきた取引先とやり取りをしてください。としか国税の立場としては言いようがないのではないかなと。
「相手が免税事業者であれば税額控除ができない」というのが法律ですし、余計な例外をつくってしまう訳にもいかないでしょうしね。
しかし、(1)については実務上そのように進んでいくのではないかと想像しております。
金額の多寡によるかもしれませんが、特に少額であればそのための修正申告による双方の手間(修正申告書の提出前に国税側も計算をして納税者へ税額などを伝えるのが一般的です)もありますので。
ただ、これはあくまでも「保管しているインボイスに不備がある」というケースであり、「そもそもインボイスを保管していない」というケースは別で考えておいた方がよいです。この論点としては以前の記事にも載せた3万円未満の領収書に関する取り扱いが変更になることもありますし、1年間の合計金額が高額になりがちな接待交際費による飲食代の領収書を保管していなければそれだけで消費税の額も相当な額になると思われますので。そのため、特にカード支払い時の領収書のもらい忘れに注意し、自社で出来ることはきちんと対応しておくことは必要ですので注意してください。
なお、あくまでもこれらは「方針」ですし、税務調査については個別事案によるところも大きいので参考程度にとどめておいてください。
札幌で税務顧問や相続税について税理士をお探しの方はぜひお声がけください。
佐藤友一